2024年11月30日号
生を確かめたい
坂本昌さんの水彩画展

photo  元音楽教諭で大曲小学校校長などを務めた坂本昌さん(87)=大仙市大曲上栄町=の水彩画展が12月5日まで、大仙市のshare space「キタマルコ」で開かれている。豊かな色彩と穏やかな筆致の新作38点を展示。「いまが一番しあわせ」と語る坂本さんが、持病とむき合いながら絵に命を吹き込む。
 坂本さんは山形大学教育学部特設音楽科卒業後、教育の道へ。県立保呂羽山少年自然の家所長や、「全校音楽」で知られる大川西根小学校、大曲小学校の校長などを歴任した。  40代の頃、とある媒体に「50までは指揮者をやり、60を過ぎたら個展を開く。70からは詩人になる」と書き記した。その夢が思いがけず実現したのは2020年。「キタマルコ」の前身、画廊喫茶ブランカでの「1st&Last」展だった。最初で最後のつもりが、翌年には「2nd&Last」、23年には「3rd&Last」と続き、今回で4度目の開催となる。
 描かれるのは、坂本さんが主宰する音楽教室「坂本感性教育研究所」の生徒をモデルにした人物画や自宅の軒先に咲く花、山形にむかう道中で眺めた鳥海山、地元の風景など身近なもの。
 「出を待つ少女」は舞台袖で出番を待つバレリーナの後ろ姿を描いた。少女の背中越しに見える華やかな舞台と舞台袖の静けさとのコントラストが、少女の期待と緊張を伝える。  「落日B」では、残存湖に沈む西山の夕日と時の移ろいを、「幻想丸子橋」では月明かりに照らされた丸子川を詩的豊かに表現した。
 「自分はあくまでもピアニストで、演奏家。画家ではないので、絵は気ままに描いている」と笑う坂本さん。「自己表現することで生を確かめている」と語る。
 持病を抱えながらも、悲壮感はない。「病気を抱えて不安はあるが、自己表現をしながら、明日はこれをやろうなどと考えていると楽しい。病や老いと愉快に付き合えるのは自己表現があるから。恥も外聞もなくなった今だからこそ出来ること。そうなってから本当の人生があるような気がする」
 絵や音楽に触れると不安から解放され、幸福感に包まれるという。その安らいだ心持ちは作品世界にも映し出され、見る人を優しく包み、癒す。
 坂本さんは「自分の絵にメッセージはないが、どの絵の中でも願っているのは世界平和。あとは見る人が自由に感じてくだされば」と微笑んだ。
 開催時間は午前10時から午後5時(最終日は3時)まで。入場は無料。

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※写真は
来場者と作品について語る
作品を前にする坂本さん
穏やかな雰囲気の作品が並ぶ
「出を待つ少女」


詳しくは2024年11月30日(土)号をご覧下さい。
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