2025年9月9日号 |
戦争の記憶、未来へ
アーカイブズ講座
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大仙市アーカイブズは先月20日、同強首の市アーカイブズで「大仙市の人びとと戦争の時代」をテーマに講座を開いた。市民など約10人が参加。戦後80年を迎え、戦争体験者から直接話を聞く機会が失われつつある中、残された戦争の記録をいかに次世代に継承するかという課題と向き合った。
講師を務めた同アーカイブズの蓮沼素子主幹は「終戦の年に生まれた人は80歳、当時成人だった人は100歳を超えるなど、戦争体験を持つ人は年々減少している。残された記録をもとに、当時の記憶を後世にどう継承していくかが問われる時代になった」と話す。
講座では地域に残る戦争の記録から「銃後の生活」「召集と戦地の状況」「戦後の人びとの暮らし」の3つの視点で当時の様子を解説した。
銃後の生活では、成人男性の多くが召集され戦地へと駆り出される中、残された女性たちが暮らしを守る様子を紹介。配られた資料からは、統制・監視が強化された戦時下で懸命に生きる人々の姿が浮かび上がった。
日中戦争からアジア太平洋戦争における県内の戦死者数は、県の発表で3万4034人(軍人・軍属のみ)に上る。参加者は地区ごとに記された市内の戦死者数(同)の資料を真剣な表情で見つめた。
戦後については、市域への連合軍進駐時に住民に周知された「心得」などを資料で紹介した。「激情に駆られて進駐軍に暴行を働かない」「連合軍の暴行・掠奪には相互に助け合って難を逃れる」など9項目が示され、戦後の混乱期に揺れ動く人々の複雑な心境がうかがえる。
蓮沼さんは「戦後80年が経過し、戦争の記録は個々人の体験記録から地域全体の歴史記録へと変化してきている。今後は記録を保存・公開する施設の重要性が可視化され、そうした機能を持つ施設の役割が大きくなっていくのでは」と指摘。「戦争体験者がご存命の今が、ご本人から話を聞いて記憶を継承できる最後の機会。今回の講座が市の戦争記録を次世代につなげるきっかけになれば」と語った。
※写真は
資料で読み解く戦争の時代
講師の蓮沼さん
当時の記録をたどる
企画展「昭和という時代展PARTT」を見学
実際の資料をもとに解説
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