2025年9月27日号 |
幽玄の調べ
まほろば唐松 定期能公演
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大仙市協和の唐松城能楽堂で20日、「まほろば唐松 定期能公演」が2年ぶりに開催された。多くの能楽ファンが訪れ、時を超えた幽玄美に酔いしれた。
2年ぶりの開催とあって、能楽堂は公演を待ちわびた観客で埋め尽くされた。この日の番組は能「弱法師」、狂言「仏師」、仕舞「天鼓」、能「羽衣」の四曲。観客は厳かな雰囲気の中、息をのんで舞台を見つめた。
能「弱法師」は、河内国高安に住む高安通俊が、他人の讒言を信じて息子・俊徳丸を追放した後、盲目の乞食となったわが子と再会する物語。シテの栗谷明生氏が、名家の息子から弱法師に身を落としつつも清らかな心を失わない俊徳丸を繊細に演じた。袖に散る梅の花びらの香に心を寄せる場面では、不幸な境遇にありながら優雅な心を保つ青年の奥深い内面が表現された。
能「羽衣」は、三保の松原を舞台に漁師・白龍と天女の交流を描いた名曲。松の枝にかかる美しい衣を見つけた白龍は、家宝にするため衣を持ち帰ろうとするが、そこへ天女が現れて衣を返してほしいと頼む。衣がないと天に帰れないと嘆く天女の姿に心動かされ、白龍は舞を見せてもらう代わりに衣を返すことに。
シテの佐々木多門氏演じる天女が羽衣をまとって舞い始めると、会場の空気は一変。天女は月宮を表す舞を披露し、さらに春の三保の松原を賛美しながら舞ってみせると、やがて舞い上がった富士山の霞にまぎれて消えていく。天女の優雅で力強い舞に、会場は幸福感あふれる静寂に包まれた。
大仙市内から訪れた70代女性は「久しぶりの能公演で心が洗われた。羽衣の美しさは格別だった」と話した。
狂言「仏師」では、野村裕基氏が仏師を装う詐欺師を軽妙に演じて笑いを誘い、仕舞「天鼓」では友枝昭世氏が洗練された舞で観客を魅了した。
※写真は
天女があでやかに舞う「羽衣」
「弱法師」
笑いを誘った狂言「仏師」
力強い地謡
幽玄美を味わう観客
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