| 2025年11月13日号 |
アイディアと情熱で世界へ
宮腰精機の藤原鈴司さんが講演
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「アイディアと情熱さえあれば、地元秋田で働きながら世界を相手に仕事ができる」―。太田文化プラザで5日に開催された大仙市太田地域文化講演会で、宮腰精機株式会社取締役の藤原鈴司さん(63)が力を込めた。太田中学校の全校生徒や地域住民など、市内外から約170人が参加。最先端の技術を駆使して世界に挑む地元企業の取り組みに聞き入った。
講演に先立ち、主催の太田地域自治組織連絡協議会の熊谷隆雄会長があいさつ。「世界で活躍する地元企業を知る有意義な機会」と期待を込めた。
藤原さんは昭和37年、太田町生まれ。太田中、横手高校、岩手大学農学部を経て昭和60年、宮腰精機国見製作所(現・国見工場)に入社した。現在は取締役として国見・刈和野両工場長を務める。
印刷機の設計から販売まで一貫して手がける同社。アナログ印刷機とデジタル印刷機双方を取り扱い、高性能な印刷機と後加工機を提供する世界唯一の印刷機メーカーとして、国内外の顧客ニーズに柔軟に応える。
その技術は航空会社のバゲージタグやJR東日本の新幹線チケット、マクドナルドの包装紙、宝くじなど、身近な製品に広く活かされており、会場の参加者からは「こんなものまで」と驚きの声が上がった。
講演では、藤原さんが開発に携わった設定操作AIアシストシステム「yaless(ヤレス)AI」を紹介。印刷業界では失敗して捨てる損紙を「ヤレ」と呼ぶことから、それを「レス(無くす)」という意味で名付けた。熟練工の経験と勘に頼っていた印刷機の水量調整を、AIが温度や湿度、インキ温度などを検知して最適値を提示。経験の浅いオペレーターでも高品質な印刷を実現でき、損紙を30%以上削減する。
今年9月にスペインで開催された国際展示会では、水とインク量をAIが自動調整する「yaless AIプロフェッショナル」と生成AIを活用した最新機種を出品。多言語対応で外国人労働者も母語で操作できることから、人手不足と高齢化が進む印刷業界の救世主として注目を集めた。
「お客様の困りごとを解決しようとする情熱や発想力が挑戦の力となる」と語る藤原さん。「開発を止めたら企業は死んでしまう。新しいことにどんどん挑戦していかないと、お客様の困りごと解決にも対応できなくなる」。変化を恐れず技術革新に挑む重要性を強調し、新技術のトレンドを敏感に取り入れて学び続ける姿勢や、諦めずに最後までやり抜く意気込みの大切さを訴えた。
太田地域から参加した50代男性は「人口減少が進んで働く場所も減る中、地元の若者を積極的に採用し、地域に貢献できる企業があるのは素晴らしい。新しい技術をどんどん取り入れて挑戦する姿勢がとても勉強になった」と話した。
講演後、太田中の代表生徒が感謝の花束を贈ると、会場は大きな拍手に包まれた。
※写真は
各方面で活かされる宮腰の技術を紹介
あいさつする熊谷会長
講演する藤原さん
花束を受ける藤原さん
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