2026年8月13日号
かけ合う唄がつなぐ心
六郷かけ唄保存会の講演会と体験教室

photo  「若くてきれいなお前に惚れて 一緒になれた俺は幸せ」。そんな夫の唄いかけから、おしどり夫婦の愛のかけ合いが始まるのかと思いきや、妻の返しからまさかの展開に―。当意即妙、ユーモアたっぷりのかけ合いに審査の笛が鳴り響いた。
 美郷町六郷かけ唄保存会(熊谷曉会長)は7月25日、美郷町中央ふれあい館で文化講演会を開いた。民謡・口承文芸研究家の宮崎隆さん(83)=兵庫県西宮市=が、参加者約20人を前にかけ唄の魅力を語り、その後は会場を熊野神社境内の杉の子会館に移して、かけ唄体験教室を開催した。
 六郷のかけ唄は、熊野神社(熊谷曉宮司)の例祭・宵宮祭で夜を徹して即興の唄を交わし合ってきた伝統行事。昭和28年に大会形式となり、以来毎年8月23日に杉の子会館で開催される全県かけ唄大会では、「仙北荷方節」のメロディにのせて参加者が即興の文句を作り、唄いかけ合う。今大会で71回目、コロナ禍の特別大会を含めると通算74回目を数える。
 講演会で宮崎さんは、かけ唄が中国雲南省や東南アジア地域にも広がる世界的な文化であると紹介。近年は人口減少や高齢化によりピーク時の盛り上がりは見られなくなったものの、「民謡は滅んでいくものではなく、時代とともに変容していく」と語った。
 歌は古くから人と人とを結ぶ手段であり、恋の道具でもあったという。「言葉は相手と交流するためにある。それがかけ合い」。即興だからこそ言えること、歌だから出る本音もあると話し、「相手をつぶさずにかけ合うのが、かけ唄のいちばん面白いところ」と、その神髄を語った。過去や未来を思い煩うのではなく、「今ここで」楽しむことがすべて。「やってこんなに面白いことはない。ちょっとした発想の違いがかけ唄を盛り上げ、それに相手が返してくれれば最高。かけ唄の灯りを消さないでほしい」と語りかけた。
 秋田市雄和の工藤一紘さんは「かけ唄とは、もうひとつの民謡。そういう高い文化を六郷地域が長く大事に温めているのは本当に素晴らしい」と述べた。
 続く体験教室では、昨年の全県かけ唄大会優勝者・佐藤正太郎さん=大仙市=が仙北荷方節を披露。続いて妻ハツさんと息の合ったかけ合いを展開した。夫婦になれた幸せを唄う夫に、妻は賭け事や酒、女に泣かされたと応酬。賭け事は今すぐやめるが酒と女はやめられぬ、と夫が返せば、妻からはさらに手厳しい一撃が。夫婦漫才さながらのかけ合いに会場からは笑いが起こり、熊谷会長がかけ唄終了を告げる笛を吹き鳴らした。
 ほかの参加者も、甲子園や独自の思いつきをテーマにかけ合いに挑戦。ヒグラシの鳴く境内に笑い声と審査の笛が交互に響いた。
 全県かけ唄大会は今月23日午後7時半から、同会館で開催される。新人の参加も大歓迎で、当日参加も受け付ける。

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※写真は
かけ唄体験教室
全員で「仙北荷方節」を合唱

詳しくは2026年8月13日(木)号をご覧下さい。
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